ノースカロライナを拠点にするデュオ、マンドリン・オレンジの曲「The Wolves」の歌詞が意味するものについて

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この1年半ほど(もっと長いかもしれない)音楽をちゃんと聴いていなかったのを反省して、ブランクを埋めている。

Tides of a Teardrop - Mandolin Orange

最初に聴いたものの1枚が、マンドリン・オレンジの『Tides of a Teardrop』。去年の2月頃に出たアルバム。マンドリン・オレンジは、ノースカロライナのチャペルヒルを拠点に活動するアンドリュー・マーリン(vocals, mandolin, guitar, banjo)とエミリー・フランツ(vocals, violin, guitar)のデュオで、これが6枚目になる。

最初はアルバムの全体的なことを書くつもりだったが、2曲目の「The Wolves」にはまってしまった。筆者が“オオカミ”に関心を抱いていることは、「イタリア(アブルッツォ)ワイン、ルピ・レアリ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ オーガニックで鶏もも肉の北京風揚げものや豚ロース肉のソテーをいただく」でちょっとだけ触れた。

楽曲を手がけるマーリンがオオカミを通してなにを表現しているのか気になって、歌詞をチェックしたら、象徴的な表現が関心を集めそうな内容になっていた。アメリカのメディアならそこを掘り下げているだろうと思って調べると、「Immigration, Fear & Complicity: A Closer Reading of Mandolin Orange’s “The Wolves” | Medium.com」という興味深い記事が見つかった。

歌詞のポイントになるのは、そこに描かれる女性とオオカミがなにを意味するのかだ。記事を書いているChris Barrはまず、音楽ライターが書いた2本の記事に触れ、彼らがこの歌詞を困難な人生を送ってきた高齢の女性の物語と解釈していることに落胆し、歌詞の意味を説明していく。

歌詞が示唆するのは、高齢の女性ではなく、自由の女神で、そのことによって曲の意味は劇的に変わる。彼女の背後では門が閉ざされ、私たちが牙を剥く。牙を剥く私たちとはオオカミのことだが、そのオオカミはアメリカ人を指している。この私たちという共犯関係が葛藤につながっている。つまり、この曲は象徴的な表現を通して移民問題を扱っている。

ちゃんと歌詞を読むと筆者も女性は自由の女神だと思うが、だからといって高齢の女性という解釈が間違いということにはならない。マーリン自身も、メタファーを盛り込めば、まったく異なる解釈も生まれ、それがソングライティングの面白いところだとどこかで語っていた。ただ、いいかげんに聴いてそう解釈したのなら残念だが。

歌詞の解釈にまつわるこの記事を読んで、別の意味で興味深く思えたことがある。Chris Barrが最初に触れた記事の1本は、「Rolling Stone」のもの。その昔、ロック・ジャーナリズムが盛り上がっていた時代であれば、音楽ライターはおそらく自由の女神と解釈しただろう。しかしいまはそれが高齢の女性になる。そこに時代の変化を見ることができる気もする。





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