キャベツを刻まずに丸ごと発酵させるバルカン・スタイルのザワークラウトのつくり方を比較・観察してみる

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ザワークラウトをつくりつづけていると、気になってくるのが、キャベツを刻まずに丸ごと発酵させる方法。Sandor Ellix Katz著『サンダー・キャッツの発酵の旅 世界中を旅して見つけたレシピ、技術、そして伝統』には、「まるごとサワーキャベツ」について以下のような記述がある。

「クロアチアだけでなく南東ヨーロッパのバルカン諸国では、キャベツをまるごと発酵させるのが一般的だ。これによって風味はより強く、土臭くなる。発酵させたキャベツを細切りにして食べる場合には、食卓に出す直前に細切りにする」

また、バルカン諸国では、サワーキャベツを使ったロールキャベツ、サルマ(Sarma)をつくるために、まるごとサワーキャベツが不可欠になっているという。確かに、刻んだザワークラウトではつくれない。肉や魚の切り身を刻んだザワークラウトで覆って、オリーブオイルをかけて蒸しても、生のキャベツにはない旨味があるのだから、サルマもうまいに違いない。

そのまるごとサワーキャベツをすぐにつくろうとは思っていないが(寒くなりはじめたころに仕込むのがよさそうなので)、つくり方は頭に入れておきたい。ということで、あまりたくさんのキャベツではなく、3個から6個程度の、家庭で仕込むようなレシピをピックアップして、比較・観察してみた。

▼ バルカン・スタイルのザワークラウト~まるごとキャベツ

この動画では、陶製の大きめの円筒型容器に、6個のキャベツをまるごと仕込む。まずキャベツの芯をくり抜き、その穴に塩を少し入れ、穴を上にして容器に詰めていく。風味づけに、ベイリーフと粒の黒こしょうをちらす。次に塩水を準備。1クォートの水に塩大さじ2杯をしっかり溶かす。キャベツの量や詰まり方によって、どのくらい塩水が必要になるかはわからないが、この塩水を1クォートずつ加えていけば、塩分量は一定になる。確かに、水だけ先に入れて、それに合わせて塩を加えると塩が溶かしづらいので、なるほどと思う。あとは逆さにした平皿で蓋をし、重しをのせ、容器の蓋をして、常温で約1か月。完成したサワーキャベツを保管できる涼しい場所があればいいが、この量はやはり難しい。

▼ ロールキャベツ用の発酵キャベツのつくり方

こちらはもっとスリムな円筒型ポリバケツに3個のキャベツを仕込んでいるが、あまり隙間をつくらずに縦に重ねていけるのがいい。キャベツの芯をくり抜き、大さじ山もり1杯程度の塩を詰め、穴をうえにして縦に重ねる。風味づけに使うのは、粒こしょうとホースラディッシュ。ルーマニアではほとんどの家がホースラディッシュを使っていた。塩水は1リットルに塩40gの割合で、あらかじめ10リットル分つくり、それをキャベツがしっかりかぶるまで注ぎ、逆さにした平皿で蓋をし、石を乗せ、容器の蓋をして終了。

▼ キャベツをまるごと保存、昔ながらのサワーキャベツ、伝統的なレシピ

こちらは梅酒瓶のような容器に中サイズのキャベツを3個。1個はまるごとで、2個は半分、または4つに切り、隙間を埋めるように詰める。このレシピの場合、キャベツの芯はくり抜かず、そのまま入れている。風味づけが多彩で、粒こしょう、ホースラディッシュ、セロリの葉、ベイリーフ、乾燥したディルの花と茎、さらに(色づけとして)好みでマルメロ(西洋かりん)あるいは紫キャベツを入れる。

▼ 発酵キャベツ(ザワークラウト):キセリ・クプスのつくり方

こちらは、大量のまるごとキャベツを仕込む動画だが、どのキャベツも芯をくり抜いた穴にいっぱいになるまで塩を入れているのに驚いた。しかももちろん、キャベツを詰めたあとで容器を塩水で満たす。かなりの量の塩を使っているように見えるが、どうなのだろう。

保管のことを考えると、最初はやはりキャベツ1個、あるいはもう1個を4つに切って隙間を埋め、完成したらなんとか冷蔵庫にしまうしかないか。

《参照/引用文献》
● 『サンダー・キャッツの発酵の旅 世界中を旅して見つけたレシピ、技術、そして伝統』Sandor Ellix Katz著、水原文訳(オライリー・ジャパン、2024年)




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● 『サンダー・キャッツの発酵の旅 世界中を旅して見つけたレシピ、技術、そして伝統』Sandor Ellix Katz著、水原文訳(オライリー・ジャパン、2024年)