イタリア・カンパーニャ州発祥のアクアパッツァの料理術でちょっと気づいたこと

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直訳すると「狂った水」を意味するアクアパッツァ(acqua pazza)は、比較的よく作る料理のひとつだ。

真ソイのアクアパッツァ

最近作ったのは真ソイのアクアパッツァ。材料は、真ソイ、あさり、やりいか(いつもは入れないがたまたまあったので)、プチトマト、黒オリーブ、ケイパー、にんにく、アンチョビ、水、オリーブオイル、パセリ、塩など。

アクアパッツァを作るときには、まずフライパンにオリーブオイルをひいて魚を焼くのが一般的だと思う。手元にあるレシピ集を見ても、最初は魚を焼いている。

いちばんやさしいイタリア料理』で紹介されているアクアパッツァでは、フライパンにつぶした皮付きのにんにくとオリーブオイルを入れて火にかけ、油に香りを移し、魚を入れて中火で両面をこんがり焼く。

「アクアパッツァ」日髙良実シェフが教えるイタリア魚介料理レシピ』で紹介されている金目鯛のアクアパッツアでも、フライパンにE.V.オリーブオイルをひいて、中火で金目鯛の両面を焼く。「こんがりと色づくまで焼いたほうが香ばしく、皮の旨みも出る」という説明もある。

筆者も最初に魚を焼いている。ところが、たまたまネットで目にした海外のレシピ動画では違っていた。

▼ こちらの動画では、フライパンにオリーブオイル、にんにく、カットしたトマトを入れて炒め、塩、こしょうで味付けし、白ワインを入れ(ここらでacqua pazzaがcrazy waterを意味するというコメントが入る)、刻んだパセリを入れ、それからやっと魚を入れて、魚の上に煮汁をかけ、再び味付けをし、フタをして弱火で煮込む。つまり、魚は焼かない。

▼ 適当に選んだもうひとつの動画でも、フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて炒め、唐辛子を入れ、カットしたトマトを入れ、ケイパーやカットした黒オリーブを入れ、魚と同時に水も入れてすぐにフタをして煮込む。前の動画もこちらも、あさりなど貝類は入れない。

そこでふと思ったのは、アクアパッツァはもともと素朴な漁師料理のはずで、この料理人たちは、洗練される以前のより原形に近いアクアパッツァを紹介しているのではないかということだ。

というわけで、もう一冊のレシピ集をチェックしてみることに。『イタリアの地方料理――北から南まで 20州280品の料理』では、州ごとに地方料理が取り上げられているので、原形に近いレシピが紹介されているかもしれない。

カンパーニア州のページには、「パッケリ ホウボウのアクアパッツァソース和え」という料理が紹介されている。その最初の手順は以下のようなもの。

「ホウボウを掃除し、塩をして、フライパンに入れる。つぶしたニンニクとチェリートマト数粒を入れ、魚が半分浸るくらいに水を注ぎ、オリーブ油少量を加えて煮込む」

これを読むと、もともとのアクアパッツァは、とてもシンプルな魚の水煮だったのだろうと思えてくる。素材が新鮮であれば、それは間違いなくうまいはずだ。

《参照/引用文献》
● 『いちばんやさしいイタリア料理』監修:長本和子、料理:佐藤護(リストランテ カシーナ カナミッラ)(成美堂出版、2009年)
● 『「アクアパッツァ」日髙良実シェフが教えるイタリア魚介料理レシピ』日高良実(世界文化社、2018年)
● 『イタリアの地方料理――北から南まで 20州280品の料理』(柴田書店、2011年)




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