「天穏 山廃 無濾過純米酒 山田錦 H30BY」は、小田急線・本厚木駅から徒歩約7分のところにある寿屋酒店で購入。
基本的な情報をまとめておくと(裏ラベルや寿屋酒店の商品説明など参照)、醸造元:板倉酒造有限会社/醸造元所在地:島根県出雲市塩冶町/原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)/原料米:山田錦100%/精米歩合:70%/酵母:無添加/アルコール分:15度/2回火入れ/日本酒度:+6/製造年月:2020年1月/出雲杜氏 小島達也。
醸造元のコメント(裏ラベルより):「まるく やさしく 強くありたい」
寿屋酒店の商品説明:
「柔らかな旨味
爽やかな吟香に柔らかな乳酸の香りを感じます。まるく軽く柔らかい味に複雑さも顔を見せ、とても心地よく、含んだ瞬間いい酒だと気づくはず。最後に舌に残る若干の渋味辛みもプラス加点。買うべき1本ですよ」
この天穏は、「島根の地酒、天穏 山廃 無濾過純米酒 山田錦 H30BYの常温と燗で黒そいの刺身と煮つけとあらの味噌汁、かますのフライと混ぜご飯をいただく」のときに抜栓してから常温保存で3年3か月と10日ほど。
板倉酒造の所在地は、島根県出雲市塩冶町。海に近い蔵といってよいだろう。わが家ではもっぱら魚介に合わせている。
料理に行く前に調味料の話を。最近、読み出した清水みのり著『調味料を変えるだけ! 身体が喜ぶ発酵調味料メソッド』に触発され、調味料を変えて、いろいろ試してみることにした。とりあえず、この日から使い始めたのが、以下の醤油とみりんと塩。どれも本で取り上げられている調味料。
大分県のフンドーキン醬油の「吉野杉樽天然醸造醬油」。商品説明(ラベルより):「吉野杉樽天然醸造醬油」は、吉野杉で作った木樽に厳選された国産大豆、国産小麦、天日塩を原料として仕込み、自然の温度でじっくり発酵・熟成させました。豊かな香り、澄み切った赤褐色、塩味を感じさせないまろやかなうまみは、まさに天然醸造の逸品です。
愛知県の角谷文治郎商店の「三州三河みりん」。商品説明(ラベルより):角谷文治郎商店は、みりんの本場・三河で歴史に磨かれた技と味を守り、創業以来一〇〇余年みりん一筋に励んで参りました。この「三州三河みりん」は、国内産の環境に配慮した栽培法のもち米を厳選吟味し、地元愛知県産米の米こうじ、自社醸造・蒸留の本格焼ちゅうを使い、二年にわたる長期熟成によってできる「本格みりん」です。みりんは五〇〇年前より甘い高級なお酒として醸造され、飲み親しまれてきました。そしてその美味しさが、料理に照りツヤよく、生臭みを消して香りよく、上品な甘さで、素材の旨みコクを引き出す酒類調味料です。
東京都の海の精の「海の精 ほししお」。商品説明(パッケージより):素材に“甘み”と“旨み”をのせるお塩です。「海の精ほししお」は、独自製法の天日海塩。天日だけで結晶させた塩は、雨や湿気の多い日本にはありませんでしたが、独自の製法によって、1977年に誕生しました。海外の大量生産された天日塩とは成分が異なり、味もまろやかです。
生命維持に欠かせないマグネシウム、カルシウム、カリウムといった少量微量の成分が含まれています。
ということでこの日の料理へ。
この日に開栓した吉野杉樽天然醸造醬油(開栓後0日)。まずは刺身に使ってみる。色がきれいでうまみがあるが、それ以前に、これまで使っていた醤油よりも、食材によくなじむように感じられ、それもおいしさにつながっているように思える。
ところで、醤油はどのくらいの期間で使いきればよいのか。高橋万太郎・黒島慶子著『醤油本』(※2015年刊行だが、2023年に『醤油本改訂版』が出ている)では、一か月で使い切ることが推奨され、以下のように説明されている。
「醤油は塩分のおかげで腐りはしないものの、『酸化』をして色も風味も劣化してしまう。開封後一ヶ月も経てば、輝き透明感のある赤色は、くすんだ茶色になり次第に黒色に。すっきりとし、余韻に甘みが広がる心地よい香りは弱まり、劣化した印象に。味にえぐみが出てくる」
さらに、醤油の色と化学反応についての以下の説明も勉強になった。「醤油を醸造している間は赤みが増し、開栓後は黒くなっていく。その違いは、まず諸味の中が乳酸菌や酵母菌によって酸素のない状態になる。その条件下で糖やアミノ酸が化学反応すると鮮やかな赤色が増していくのだ。一方開栓後に酸素と触れ合って『酸化』すると、酸素との反応で醤油が黒くなる」
ということで極力一か月で使い切ることを目指すため、開栓後の経過時間を使うたびに記録しておくことにした。
きびれ(きちぬ)のかぶと煮。醤油は吉野杉樽天然醸造醬油、みりんは三州三河みりん、酒は福正宗 純米 料理酒、砂糖は普通の三温糖、それに水。
味がまろやかで、おいしい。これまでの煮つけは、醤油の味がもっと前に出ていた気がする。醤油だけでなく、みりんの効果もあるのだろうが、素材と調味料、調味料と調味料が一体になっているといえばよいか。
ちなみに、みりんはどのくらいの期間で使い切ればよいのかというと、この三州三河みりんのラベルには以下のように書かれている。
「期限後も腐敗酸敗することなく、熟成が徐々に進み、色が濃くなり、甘さが減少しますので、加減してお使いください」
きちぬ(きびれ)の塩焼き。ふたつの切り身それぞれに、いつも使っている塩のひとつと海の精 ほししおをふって1時間以上おいてからグリルで焼いた。奥が海の精 ほししおを使った塩焼きで、よりまろやかで甘みがあり、やはり食材になじんでいる感じがする。
天穏 山田錦の上燗で。調味料の延長のようになるが、やわらかく、穏やかな天穏も魚介料理によくなじむ。ラベルには「まるく やさしく 強くありたい」という言葉があるが、それは調味料にもあてはまりそうだ。食材と酒を結ぶ調味料が変わると酒の味の感じ方も違ってくるような気がしてきた。
《参照/引用文献》
● 『醤油本 醤油を見つけて醤油を知り醤油を楽しむ本』高橋万太郎、黒島慶子著(玄光社、2015年)
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