ケニアとのコラボを推進するナイジェリアのドラポ・アデレケ(ローラディー)監督がナイロビを舞台に男女の出逢いを描く合作ラブコメディ『Just in Time』

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ナイジェリア出身の監督/脚本家/プロデューサー/編集者、ドラポ・アデレケ(ローラディー)が、ナイジェリア映画の枠にとらわれず、ケニアとのコラボレーションを推進していることは、彼女が監督した『Plan B』(2019)を取り上げた前の記事で書いた。

『Just in Time』(2021)は、アデレケが、ケニア出身の女優/プロデューサー/監督、サラ・ハッサンのアルファジリ・プロダクションズと再びタッグを組んだケニア=ナイジェリア合作の第2弾といえる。アデレケが監督/脚本/編集/製作総指揮/共同製作/プロダクション・デザインを、サラ・ハッサンが主演/製作/製作総指揮を務めている。

ムソニ(サラ・ハッサン)は、ナイロビにある家族経営の書店で6年以上も店長を務めてきたが、突然、閉店を告げられる。オーナーが亡くなり、後を継いだ娘アディティ(イヴ・デスーザ)が、高級スパをオープンすることに決めたのだ。そんなとき、ある事情でムソニと疎遠になっていた従姉妹のンジェリ(ピエラ・マケナ)から連絡があり、娘のアシュリー(ステイシー・ワウェル)を、ナイロビを離れる2週間、預かってほしいと懇願される。失業して時間があるムソニは、しぶしぶ引き受ける。ンジェリは夫と離婚したのだが、それをまだ娘に伝えていなかった。

ムソニは、アパートの隣人アンソニーからも頼まれごとを引き受けていた。アンソニーが出張するあいだに、彼の部屋に滞在することになっているカメラマンに鍵を渡すことになっていた。ところが、イギリスからやってきたカメラマン、コベナ(マウリ・ガヴォー)がムソニを訪ねてくると、彼女は、預かった鍵を外出した際に立ち寄った店に忘れたことに気づき、それを回収して戻ると、コベナは彼女の部屋のソファで眠りに落ちていた。

ムソニは、しばらく一緒に暮らすことになった醒めた子供アシュリーに戸惑い、そこにアパートの隣室に滞在するコベナが絡んでくる。

▼ ドラポ・アデレケ(ローラディー)監督『Just in Time』(2021)予告

コベナを演じるのは、ノリウッドで活躍するマウリ・ガヴォー。これまで取り上げた作品では、カヨデ・カスム監督の『Kambili: The Whole 30 Yards』(2020)で、ヒロインのカンビリ(ナンシー・イシメ)と付き合う打算的な彼氏ジョンを演じていた。だが、本作の場合、ストーリーのうえでは、ナイジェリアはまったく絡んでこない。というのも、マウリ・ガヴォーはもともとガーナ人の会計士という経歴の持ち主で、本作で彼が演じるコベナも、ガーナ人でイギリスで暮らすカメラマンという設定になっているからだ。

アシュリーを演じるのはステイシー・ワウェル。ケニアでは子役として注目を浴びているようだが、大人の行動を冷静に観察している醒めた子供と、喜びを全身で表現する無邪気な子供の演じ分けには目を見張る。彼女の演技がなかったら、アデレケの脚本も生きてこなかっただろう。というのも、本作はヒロイン、ムソニが店長を務める書店の閉店からはじまるだけでなく、アシュリーが、ムソニやコベナに心を開くきっかけも本に関わっている。しかも、アシュリーは本をきっかけとして、ムソニやコベナとそれぞれに異なる絆を構築し、それが終盤に生きてくることになる。

ちなみに、アデレケは、『In Bloom』(2024)では、インド人のプリヤンカ・バナジー、レバノン系アメリカ人のニコール・ティーニーと共同で監督を務め、コラボレーションがさらに広がっているようだ。