ナイジェリアのラゴスとケニアのナイロビを往復するドラポ・アデレケ(ローラディー)監督ならではの合作ロマンティック・コメディ『Plan B』

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ナイジェリア出身の監督/脚本家/プロデューサー/編集者、ドラポ・アデレケ(ローラディー)は、ナイジェリア映画の枠組みにとらわれない活動を展開している。

彼女はYouTubeをプラットフォームにしたドラマシリーズ『This Is It』(2016-2017)を手がけて、大きな注目を集めた。主人公のトミデ・ムウェンダ(ニック・ムトゥマ)は、ケニア人の父親とナイジェリア人の母親のあいだに生まれ、ナイロビで育った。父親の死後、母親や妹とともにナイジェリアのラゴスに移り、大学でコンピュータエンジニアリングを学び、友人と会社を立ち上げた。このドラマでは、そんな背景をもつ27歳のトミデが、恋人のデデ(チー・ンワカンマ)にプロポーズするところからはじまり、新婚生活と彼らを取り巻く人々との関係が描かれていく。

▼ ドラポ・アデレケ(ローラディー)監督『This Is It』(2016-2017)予告

このドラマは、ケニア人の俳優ニック・ムトゥマとナイジェリア人の女優チー・ンワカンマの共演で、ナイジェリアとケニアで撮影されたため、ナイジェリアだけでなくケニアの視聴者にも受け入れられた。

ドラポ・アデレケ監督のロマンティック・コメディ『Plan B』(2019)は、そんなケニアとの関係をもう一歩進めた作品ともいえる。ラゴスとナイロビを往復するように活動するアデレケは、ケニア人の女優/プロデューサー/監督、サラ・ハッサンのアルファジリ・プロダクションズとタッグを組み、ケニア=ナイジェリア合作として本作をつくった。ということで、アデレケが監督/脚本/編集を、サラ・ハッサンが主演/プロデュースを務めている。

物語は、スタイリストとして働くリサ(サラ・ハッサン)が、彼氏のイーサン(レナナ・カリバ)から突然、別れを切り出されるところからはじまる。傷ついたリサが、バーでテキーラのショットを何杯も飲み干していると、見知らぬ男が話しかけてきて、いっしょに盛り上がる。翌朝、彼女が高級ホテルのベッドの上で目覚めると、男はすでに消えていた。彼女はそれを一夜限りの関係と思っていたが、やがて妊娠が発覚する。男のことは名前すら憶えていなかったが、なんとその顔がたまたま目にした雑誌の表紙を飾っていた。

▼ ドラポ・アデレケ(ローラディー)監督『Plan B』(2019)予告

男は、ナイジェリアからケニアに進出し、ナイロビを拠点に成長している企業のCEO、デレ・クッカー(ダニエル・エティム・エフィオン)だった。リサは、そのことを親友のジョイス(キャサリン・カマウ)に打ち明け、デレに父親としての責任を果たさせることにする。リサが会社を訪れると、一度目は門前払いを食らい、再度訪れ、証拠のテープがあると詰め寄ると、これまで何度か同じようなトラブルがあったらしく、誠意のかけらもなく5000ドルの小切手を差し出したので、それを突き返して出直すことに。リサとジョイスは戦略を立て直し、今度は弁護士になりすましたジョイスも同行し、DNA検査を要求する。だが、その結果を待つあいだに、デレの態度が変化していく。

アデレケのインタビューによれば、彼女の母国ナイジェリアとケニアでは、未婚の母に対する認識に違いがあるという。ケニアでは、それが必ずしも特別なことではなく、誰もがオープンに語り合い、彼女の友人にも未婚の母がいる。ナイジェリアでは、この問題に対してより保守的で、依然として偏見の目で見られるとのこと。

成長企業のCEO、デレ・クッカーを演じているのは、ナイジェリア人の俳優ダニエル・エティム・エフィオン。彼にとっては本作が俳優として注目されるきっかけの1本になったようだが、その後は難しい役にも挑戦している。筆者が知っている比較的新しい出演作、ボランレ・オーステン=ピーターズ監督の『Collision Course』(2021)やウォルター・テイラー監督の『Jolly Roger』(2022)では、いずれも警察官とのトラブルに巻き込まれていく複雑な人物を演じている。それから、リサの親友ジョイスを演じるケニア人の女優キャサリン・カマウ。比較的新しい出演作、ルーベン・オダンガ監督の『Nafsi』(2021)では、不妊に悩むヒロインのために代理出産を自ら提案したものの、予想外の事態に追いつめられていく親友を演じている。

ちなみに、アデレケ監督のケニアとのコラボレーションはこれで終わりではなく、再びサラ・ハッサンと組んだ『Just in Time』(2021)でレベルアップされるが、それはまた別記事で取り上げたい。