ケニア人の女優/プロデューサー/監督、サラ・ハッサンといえば、ナイジェリア人の監督ドラポ・アデレケと組んだ『Plan B』(2019)や『Just in Time』(2021)といったロマンティック・コメディが思い浮かぶが、プロデューサーとしてこのような作品も手掛けるのかと思い、興味をもったのが、ヴィクター・ガトニエ監督のスリラー『40 Sticks』(2020)だ。
本作の主人公は、パブロ(ロバート・アジェンゴ)、ビギー(ムワウラ・ビラル)、ムスタファ(アンドレオ・カマウ)、マジュジュ(ザビエル・イワヤ)という4人の強盗犯。100万ドルの強奪に成功した彼らは、ほとぼりが冷めるのを待って金を分けることにする。金の隠し場所を知っているのはパブロだけだ。ところが、どこから情報が漏れたのか、全員逮捕されてしまう。その11か月後、彼らは、他の4人の凶悪犯とともに死刑囚としてキブに移送されることになる。
8人の死刑囚を乗せた護送用バスはキブに向けて出発するが、その途中、故障したタンクローリーが道を塞いでいたため、ルートを変更し、野生動物保護区を通る道を進む。ところが走行中にタイヤがパンクし、ぬかるみにはまったバスは動けなくなる。刑務官のアミーゴ(アラブロン・ニェネケ)と部下のダカリ、手錠と鎖でつながれた死刑囚たちは、徒歩で幹線道路まで戻ろうとするが、闇に包まれた森に潜む猛獣に襲われ、バスに逃げ帰る。
▼ ヴィクター・ガトニエ監督『40 Sticks』(2020)予告
バスに閉じ込められた刑務官と死刑囚は揉み合いになり、死刑囚が刑務官を排除する。手錠を外した彼らは、明るくなるのを待って逃げることにするが、暗い車内で囚人のひとりが何者かに殺害される。灯りになるものは、マッチと紙しか残されていない。そして灯りが途絶えると、また囚人が首を切られて殺害される。車内には正体不明の殺人鬼、車外には猛獣という極限状態で、残された囚人たちが追い詰められていく。
物語が展開していくに従って、アガサ・クリスティにインスパイアされていることがわかるが、このような設定をひねり出してそれを応用するところが面白い。予告編には犯人を示唆するようなシーンが盛り込まれている。そして犯人がわかると、サラ・ハッサンがプロデューサーに名前を連ねているのもわかる気がしてくる。
▼ 2020年度のKalasha International Film and TV Awards(ケニアの映画・TV賞)で、ヴィクター・ガトニエが最優秀監督賞を受賞したときには、サラ・ハッサンが、出席できなかったガトニエの代理をつとめた。
《関連リンク》
● 「ケニアとのコラボを推進するナイジェリアのドラポ・アデレケ(ローラディー)監督がナイロビを舞台に男女の出逢いを描く合作ラブコメディ『Just in Time』」
● 「ナイジェリアのラゴスとケニアのナイロビを往復するドラポ・アデレケ(ローラディー)監督ならではの合作ロマンティック・コメディ『Plan B』」