玄米酵母に興味を持つきっかけは、鎌倉に店を構えるカノムパンが、横浜そごうの地下二階食品売り場に期間限定で出店していたことだった。恥ずかしながらカノムパンについてはなにも知らなかった。
店頭に並ぶ実においしそうなパンのなかから「カレンズとクミンシード」を選び、購入するときに、ご主人らしき方に、どんな自家製酵母を使っているのかお尋ねしたところ、発芽玄米酵母とサワードウのハイブリッドとのことだった。
帰宅してからあらためてカノムパンのチラシを見たら、「パンについて」以下のように説明されていた。
「国産の小麦やライ麦、約20年間継いでいる自家製玄米酵母、ミネラルウォーター、ゲランドの塩で作ります。県内産(神奈川県藤沢市)原麦を石臼で挽いてパン生地に混ぜることで、力強い小麦の香りと甘味、モッチリしつつも歯切れの良い食感を出しています。パンに使うドライフルーツ、ナッツ類、スパイス、ハーブなどもできるだけオーガニックのものを選んでいます」
余談だが、このカノムパンのロゴがなかなか面白い。ジョン・ライドンのロック・バンド、PIL(パブリック・イメージ・リミテッド)のロゴをモチーフにして、「PIL」の文字を巧みに「カノム」に置き換えている。きっとご主人の趣味なのだろう。
ということで、発芽玄米酵母を起こしてみることにした。参考にしたのは、『うわっ、ふくらんだ!リンゴ、ブドウ、ジャガイモ、玄米…で自家製天然酵母のパンづくり』で紹介されている玄米酵母の起こし方。わが家には田中農場の玄米コシヒカリ(「プレバイオティクスも意識しつつ、田中農場のコシヒカリの玄米を土鍋で炊いて、すずきの西京焼きやくじらの大和煮でいただく」)がまだ残っていたので、まずはその玄米を水に浸けて発芽を待つ。
発酵が落ち着いたところで、レーズン酵母やりんご酵母と同じように中種つくり(「ヨーグルトメーカーでつくったレーズン酵母で中種をつくり、その中種を使って生地をつくり、パンを焼いてみる」)に着手するが、思うように育たない。酵母が弱く、失敗したかと思い、そのまま放っておいた。
ところがずいぶん時間がたってから覗いてみると、ぶくぶく活動している。
そこで半量のカンパーニュの生地をつくり、先日のサワードウ(「サワードウ・スターターを起こせた(ような気がした)ので、サワードウ・ブレッドを焼いてみて、失敗も含めた実験の楽しさを実感する」)のように、ストレッチ&フォールドを繰り返し、楕円型のバヌトンに入れて24時間近く冷蔵発酵させてみた。
このパンを焼いた日の食材は、近所のスーパーで安売りしていためばる。定期的にストックしている魚のブイヨン(「イタリアやスペインの魚介料理をつくるために常備しておきたい魚のブイヨンを、鯛やほうぼう、あかはたのあらと野菜でつくり、冷凍保存する」)を使っためばるのスープにした。
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